US IP Case Reports−最近の判決
2002年 更新分


 

US IP Case 最近の判決 à 07/29/2002 更新

Enzo Biochem, Inc. v. Gen-Probe Inc., (01-1230, 07/15/2002, Fed. Cir. 2002)

 バイオ関係の発明の記載要件が争われた事件である。特には、寄託が記載要件を補完することができるかが争われた事件である。

 この事件に関しては、200242日にCAFCで判決が一度出されている。その判決でCAFCは、寄託は発明が実施できる(enablement requirement)ということを担保するものではあるが、明細書の記載要件の補完にはならないとして、プローブを有する菌をATCCに寄託してあるので記載要件を満たしているとのEnzoの主張を退け、特許無効との地裁の判決を支持した。これに対して、再ヒアリングまたはen bancでのヒアリングのペティションが出されていた。

CAFCは、再ヒアリングを認め、前回と同じパネルによって再審理を行い、先の判決を覆して、文書として記載することが可能でない場合は、公衆が入手可能な状態での菌の寄託が記載要件を満たすことができるとの判決を出した。その結果CAFCは、被告が提示しているもう一つに争点である、クレームが寄託されている配列に限定されていない場合にも記載要件が満たされているのかという問題について検討を行なった。この点については、地裁は判断を行なっていないとして、まず地裁で判断させるべく、事件を地裁に差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 07/22/2002 更新

Telecomm Technical Services, Inc. v. Siemens Rolm Communications Inc., (00-1579, 07/02/02, Fed. Cir. 2002)

 CAFCの裁判管轄件が争われた事件である。

 この事件は、Telecommとその他のIndependent Service Organizations (“ISOs”)がジョージアの連邦地裁に、Rolmが製造販売している電話切り替え装置に関して反トラスト法に基づく訴訟を起こした。それに対して、Rolmが、ユーザーが持つRolmの装置に対するISOsのサービスが、Rolmの特許と著作権を侵害しているとの反訴(counter claim)を行なった。地裁は、反トラストに関してRolmに有利な略式判決を出し、また特許および著作権侵害に関してもRolmに有利な判決をした。これを不服として、ISOsがCAFCに控訴した。

  CAFCは、先に最高裁の判決(Holmes Group Inc. v. Vornado Air Circulation Systems Inc., 62 USPQ2d 1801 (2002))に基づき、元の訴因が特許侵害に基づくものでないので(つまり反訴においてしか特許侵害は争われていないので)、CAFCは裁判管轄件が無いとして第11巡回区控訴裁判所に事件を移すよう決定をした。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 07/17/2002 更新

Trintec Industries Inc. v. Top-U.S.A. Corp., (01-1568, 07/02/02, Fed. Cir. 2002)

  102条に関して、先行技術に発明が、”inherently”に開示されているかが争われた事件である。

  問題となった特許は、USP No. 5,818,171であり、腕時計にカラーフェース(カラーの文字盤)を製造するための方法である。その方法とは、コンピューターにより、シグナルをカラーのプリンター(printer)又は写真複写機(photocopier)に送ってシート材に印刷を行なって、それを切り取り時計に装着するという手段を含むものである。一方、先行技術であるカタログは、コンピューターのレーザープリンターを用いて印刷された文字盤を開示していた。

  地裁は、新規性無しとして特許無効との判決をした。これを不服としてCAFCに控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、レーザープリンターと写真複写機は異なるものだとして、新規性無しとの地裁の判断は誤りとした。そして、地裁の判決を破棄し、進歩性に関して審理するようにと、地裁に事件を差し戻した。

(コメント)このような事件を見るたびに、新規性・進歩性に関して地裁で十分に審理してから判決を出せないものかと思います。そうすれば、地裁において新規性無しで特許無効 −>控訴裁で判決がひっくり返り、進歩性について審理が必要 −>地裁に戻って進歩性の判断(でおそらく特許無効)−>控訴裁で進歩性に関して審理する、という時間がかかる手順を踏まなくて済むと思うのですが。(新規性だけで結論が出れば、それだけ判断した方が早いのですが、新規性のみで無効、というのはあまり無いのが現状と思います)。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 05/28/2002 更新

Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd. 535 U.S. ___ (05/28/2002)

どのような補正の場合に出願経過禁反言(プロセキューションヒストリーエストッペル)が働いて均等論が否定されるかが争点となっていたFesto事件に関して528日に最高裁がSlip Opinionを出しました。結論として2つのことが示されました。(1)特許法第112条に関する補正でも、補正が減縮補正でありかつ特許を取得ための補正であれば、出願経過禁反言が働いて均等論が否定される。(2)CAFCが示した”Complete Bar”は、ワーナージェンキンソンで明確に示された均等論と出願経過禁反言のバランスを無視するものであり、すなわち、ワーナージェンキンソンで示されら”Rebuttable Presumption”を無視するものであり認められない。その結果、判決は破棄され、さらに審理するようにとCAFCに差し戻されました。

以下は、私的な意見を羅列したものですがご参考ください。

最高裁は、補正をした場合でも均等論の働く余地はあると述べています(このこと自体は、ワーナー・ジェンキンソン事件でも示されています)。そして最高裁は、ワーナー・ジェンキンソン事件において反論可能な推定(rebuttable presumption)を働かすことにより特許権者に説明責任を負わせることを示し、均等論と出願経過禁反言のバランスが取れた法律をなっていると確認し、CAFCやり方がワーナー・ジェンキンソン事件で示されたガイダンスを無視していると述べています。つまり、ワーナー・ジェンキンソン事件では、(1)出願経過に説明がない;その結果、(2)特許性に関連して補正したとの反論可能な推定(rebuttable presumption)が働く;そして、(3)それに対して反論ができない場合は、禁反言が働き均等論の適用はない、となっています。ところがフェスト事件では、出願経過において明示の説明がない=”complete bar”として反論可能な推定の議論を飛ばしています。この点を最高裁は問題として、判決を破棄しました。しかしそれ以上は何も示してくれませんでした。以前に書いた私の予想が当たってしまい、残念に思っています。以前の私の予想はこちらを参考ください(113日付けのOthers(Topics))。以下がその部分の抜粋です。

「そこで、私の予想ですと、最高裁は、「フェスト事件はワーナー・ジェンキンソン事件で示された手続きに従って法解釈を行っていない。」との理由により差し戻して、「ワーナー・ジェンキンソン事件で示された手続きに従って再審理せよ」となるのではないかと思っています。これでは最高裁は何も示さないことになるのですが、これがずばり私の予想です。できれば最高裁に、「補正について説明がない場合」の説明はどこを見るべきか、そして反論可能な推定が働いた場合、次に何を参考として反論の是非を検討すべきか、という点に関して具体的に示して欲しいと思うのですが、私の予想ではそんなことはしないと思います。」

しかし、最高裁が”Complete Bar”を否定したことにより、均等論に対して出願経過禁反言の適用は、”Flexible”であることが示された訳です。しかし、最高裁は、今までCAFCで行なわれていた”Flexible Bar”が正しいとは述べていません。そこで問題となるのは、どのようにFlexibleな適用をするかということです。出願経過に説明が無い場合に、どのような資料を見るべきなのか?外部資料を使えるのか?使えるならどの程度使えるのか?等が全く不明です。ある意味では、一番特許権者側に立ったのが”Flexible Bar”であり、一番侵害者側に立ったのが”Complete Bar”です。CAFCNotice Functionと判決の予測性と安定性を根拠に”Complete Bar”を提案したが、最高裁に否定されました。ですから意地悪な見方をすれば、CAFCは自ら提案した”Complete Bar”を完全に諦めて昔の”Flexible Bar”にすんなり戻るとも考えにくいです。となると、今度はどのような資料を見て均等論に対して出願経過禁反言を適用するかの提案をするのではないか、より具体的には、Notice Functionを理由に(この点に関しては、最高裁は今回突っ込んだ意見を述べていません)、今までのFlexible Barよりもかなり限定された範囲の資料に制限したFlexible Barを提案するのではないかとも予想されます。しかし何れにしろ結論が出るのはまだ当分先になると思われます。地裁では、112条に関しては、出願経過禁反言は働かず、均等論の適用ありで侵害と判決していたので、新しい外部資料を評価するとなれば再び地裁に戻ると考えられ、さらに時間はかかると予想されます。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 05/15/2002 更新

Neomagic Corp. v. Trident Microsystems, Inc. (01-1631, 04/17/02, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのはクレーム解釈である。

  問題となった特許は、Neomagicが有するUSP No. 5,650,955 No. 5,703,806特許であり、シングルチップのグラフィックコントローラーに関する発明である。

   解釈が争われたのは、955特許のクレーム中の”coupling”の解釈と、806特許のクレーム中の”power supply”及び”at a negative voltage with respect”に関する解釈である。

   地裁は、それぞれの文言の解釈を行い非侵害との略式判決を出した。それを不服として控訴されたのが本事件である。CAFCは、クレーム解釈に関する争いなので、de novoで審理を行なった。

   まず”coupling”に関しては、2つのコンポーネント(logic gateunderlying substrate)が電圧差をもって電気的に連絡されていることをクレームが要求するかが問題となった(被告の製品は、どちらのコンポーネントもゼロボルトであり電位差がなかった)。CAFCは、ます通常の意味に解釈を試みたがいずれであるとも判断は出来ないとして、明細書に解釈の根拠を求めた。そして明細書の記載は電位差があることを要求しているとして、地裁の解釈を正しいとして955特許は非侵害であるとの地裁の判断を支持した。

  次に、”power supply”の解釈を行った。これに関しては通常の意味での解釈も明細書の記載に基づいての解釈も出来ないとしたが、Neomagicの専門家の意見に基づいて、”power supply”は少なくとも2つのラインを要求するとの解釈を行い、地裁の解釈を支持した。しかし、”power supply””constant voltage”を提供するかという点に関しては記録の証拠からは判断できないとした。また、at a “negative voltage with respect”に関しては、地裁は”absolute negative voltage”に意味であると解釈したが、CAFCは、そうであるならば”negative voltage”だけですみ、”with respect to”をいう文言を用いている意味がないとして、発明者は”absolute negative voltage”の意味で用いたのではないとし地裁の解釈を誤りだとした。そして、955特許に関しては地裁の判決を支持したが、806特許に関しては、地裁の判断を破棄して差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 05/12/2002 更新

Fantasy Sports Properties, Inc. v. Sportsline.com, inc., (01-1217, -1222, 04/24/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのはクレーム解釈である。

  問題となった特許は、Fantasyが有するUSP No. 4,918,603特許であり、実際のフットボールゲームに基づいて毎週データがアップデートされるフットボールのコンピューターゲームに関する発明である。

  争われたのは、クレーム中の”said player in said first and second groups receive bonus points”の解釈である。明細書中の記載では、プレーヤーの守備位置に応じてプレーヤーを第一のグループと第二のグループに分け、プレーヤーが通常出ないプレー(例えば、クォータバックがボールを受け取って走ってタッチダウンする等のプレー)を行なった場合にそれに応じでボーナスポイントを受け取るとなっていた。また、審査経過において、いろいろなボーナスポイントの考え(例えば、プレーヤーがタッチダウンまでに走った距離に応じでポイントが変わる等)を記載した文献が先行技術として引用されたが、「プレーヤーを第一のグループと第二のグループに分け、プレーヤーが通常出ないプレーを行なった場合にそれに応じでボーナスポイントを受け取る」ことは開示されていないとして特許が許可された。

  Fantasyは、SportslineYahooおよびSPNを特許侵害で訴えた。争点となったのは、クレームがいうボーナスポイントが与えられるプレーとはどのようなものを含むのかという点であった。つまり、広くボーナスポイントを与えるという態様がクレーム範囲に入るかという点が争われた。Yahooが行なっている手法は、通常のプレーに対してポイントを与えるというのもであった。

  地裁は、審査経過および明細書の記載より非侵害と略式判決を出し、それを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、審査経過より、Fantasyは引用された文献に開示された態様(開示されたプレーの態様に対してボーナスポイントを与えるということ)は出願人が放棄したものであり、また明細書の記載より、クレームされているゲームは通常でないプレーに対してボーナスポイントを与えるということを必須の要件としているとして、YahooSPNが非侵害であるとの地裁の判決を支持した。しかし、Sportlineに関しては、第一および第二のグループに分けるという点に関して、事実問題に争いが残っているとし、CAFCのクレーム解釈に基づいて再度審理するようにと差し戻した。

  Fantasyは、Claim Differentiationの法理よりメインクレームを上記のように限定解釈すべきではないとしたが、Claim Differentiationは他のクレーム解釈によりクレーム範囲が定まる場合はそれを覆してまで適用される法理では無いと確認され、Fantasyの主張を退けた。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 05/06/2002 更新

In re Kollar, (01-1640,04/11/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは、特許出願人によるライセンス行為が”on-sale” bar に該当するかである。

  問題となった出願は、08/657,654 出願であり、ジアルキルパーオキシドの調製方法に関する発明である。Kollarが経営するRedox社とCelanese社の間で、出願の1年より前に契約が結ばれており、この契約が”on-sale bar”に該当するかが争われた。契約は、両者の間で技術を共有し、エチレングリコールの生産のためクレームされた製法を生産プラントのレベルに適したものにするために協力して研究をするというものであった。契約において、Kollarは、実施態様を記載した書面をCelaneseに渡した。またRodexは、将来のクレームされた製法によって生産されCelaneseによって販売された製品に対して実施料を受け取るとの契約となっていた。

  審査官は、この契約は”on-sale” barに該当するとして出願を拒絶した。Kollarはそれを不服として審判請求したが、審判部も、Celaneseは実施料と引き換えに発明を商業化する権利を得ており、また発明の実施態様が記載された書面が物理的にCelaneseに渡されているので、”on-sale” barに該当するとして審査官の判断を支持した。これを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、まず、単に特許の権利そのものをライセンスする行為は”on-sale” barに該当しないとの過去の判例を確認した。そして、方法特許に関しては、その方法により製造された製品を販売することは”on-sale” barに該当するが、発明を商業化する権利は”on-sale” barに該当しないとして審判部の判断を破棄し、再審理するように差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 04/30/2002 更新

Abbott Lab. V. Dey, L.P., (01-1374, 04/23/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは、禁反言による均等論の排除である。

  問題となった特許は、Abbottが有する USP No. 4,397,839特許であり、未熟児の呼吸困難症治療のための肺界面活性組成物に関する発明である。Abbottはこれと関連のある別の特許、USP No. 4,338,301特許を有している。839特許は、301特許の一部継続出願ではなく別出願として出願され特許となっていた。

  301特許のクレーム1は、リン脂質その他の物質を含む表面活性物質をクレームしており、リン脂質の含量は、75.0 – 95.5 %となっていた。一方、839特許のクレーム1は、さらに遊離の脂肪酸を含む表明活性物資をクレームしており、リン脂質の全量は68.6 – 90.7%となっており、遊離のリン脂質は1.0 – 27.7 %となっていた。AbbottDey301特許に関しても争っていた。

  問題となったDeyの製品のひとつは、91.8%のリン脂質を含んであり、他の製品は94.5%のリン脂質を含んでいた。それ故、「リン脂質の全量は68.6 – 90.7%」の範囲から外れるので均等侵害が争われていた。

  地裁は、Abbottが、被告製品が実質的に同じ機能を有しており実質的に同じ方法によって全体として実質的に同じ結果を得ているということを証明しているとは認めながら、301特許では「リン脂質の含量は、75.0 – 95.5 %」としていたものを839特許では「リン脂質の全量は68.6 – 90.7%」にしていることに注目し、先にクレームされた発明の改良発明は広範囲の均等は許されないとして非侵害との略式判決を出した。つまり、839特許では、リン脂質の含量を95.5%とせずに、90.7%としたことは、90.7%より上の部分を放棄したものであるとして非侵害との判決を出した。これを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、ある特許の審査経過を根拠に、それと関連する(ここでいう関連とは別の出願であるが発明が関連しているという意味である)他の特許のクレーム解釈において禁反言を用いることは許されないとして地裁の破棄して審理を差し戻した。

(コメント)親出願の審査経過が子出願にあたる特許のクレーム解釈において参照され禁反言となることは判例が示しています。しかし、発明が関連するというだけで(つまり、”no formal relationship”の状態で)、別の特許の出願経過を参照して禁反言を構成する事は許されないと示したのが本判決です。本出願では、後の出願(839特許)を一部継属出願として出願することも可能だったわけですが、出願人は別発明として特許性があるという判断のもと別出願としたことは結果として賢明だった訳です。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 04/24/2002 更新

Enzo Biochem, Inc. v. Gen-Probe Inc., (01-1230, 04/02/2002, Fed. Cir. 2002)

 争点となったのは、バイオ発明の記載要件(§112, P1)である。

 問題となった特許は、Enzoが有する特許第4,900,659であり、淋病を引き起こすバクテリアNeisseria gororrhoeaeの遺伝物質に特異的にハイブリダイズする核酸プローブに関する発明である。Neisseria gororrhoeae Neisseria meningitides は非常にホモロジーが高いのでNeisseria gororrhoeae を特異的に検出するのが困難であるという,問題があった。659特許のクレーム1は以下の通りである。

1.  A composition of matter that is specific for Neisseria gororrhoeae comprising at least one nucleotide sequence for which the ratio of the amount of said sequence which hybridizes to chromosomal DNA of Neisseria gororrhoeae to the amount of said sequence which hybridizes to chromosomal DNA of Neisseria meningitides is greater than about five, said ratio being obtained by a method comprising the following steps; …

また、クレーム4は、寄託されたプローブをクレームしていた。

4.  The composition of claim 1 wherein said nucleotide sequence are selected from the group consisting of:

a. the Neisseria gororrhoeae DNA insert of ATCC 53409, ATCC 53410 and ATCC 53411, and discrete nucleotide subsequences thereof,

b. mutated discrete nucleotide sequences of any of the foregoing inserts that are within said hybridization ratio and subsequences thereof; and
c. mixtures thereof.

明細書中には、プローブの配列は記載されていなかった。それ故、記載要件を満たしている否かが争われた。地裁は、記載要件を満たしていないとして特許無効の略式判決をした。それを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、Eli Lillyの事件を引用し、その事件において既に、遺伝物質が記載要件を満たすためには、構造や物理的性質その他により正確な定義が必要であり、クレームされた発明が得られるという単なる希望やプランではだめであると示したと述べた。そして、クレームされたハイブリダイズする核酸配列をクレームされていない核酸配列と区別しているのは、単に機能的な差異だけであるとして、そのような場合は記載要件を満たしていないとした。つまり、遺伝物質が何であるかを示すのではなく、何をするかという記載では、記載要件を満たしていないとした。

  Enzoは特許庁のガイドラインを引用して、記載要件を満たしていると主張したが、CAFCは、ガイドラインは裁判所を拘束するものではないとし、また、ガイドラインも機能のみで特定できるとはしていないとしてEnzoの主張を退けた。

  Enzoは、プローブを有する菌をATCCに寄託してあるので記載要件を満たしていると主張したが、CAFCは、寄託は発明が実施できる(enablement requirement)ということを担保するものではあるが、明細書の記載要件の補完にはならないとした。そして、特許無効との地裁の判決を支持した。

  Dykが反対意見を述べている。記載要件は事実問題であるので略式判決は不適当だとしている。また、寄託により記載要件を満たしているとした特許庁の判断を尊重すべきであるとしている。

(コメント)バイオ関連の発明の記載要件は、Eli Lillyで構造や物理的性質その他により正確な定義が必要であるとされ、本件ではそれを追認し、機能的な定義のみでは不十分と示された。これにより、バイオ関連発明の記載要件はかなり厳しいものとなると予想される。また、寄託が記載要件の補完とはならないとされたこもと重要である。特に、特許庁の手続きにおいて、明細書中に記載された配列の一部に誤りがあった場合には寄託に基づいてそれを補正できるとされてきているがそのような手続きに対する今後の影響が懸念される。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 04/02/2002 更新

Dana Corp. v. American Axle & Mfg. Inc., (01-1008, 02/12/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは、”on sale bar”を適用する場合の判断手法である。

  問題となったのは、Danaが有するUSP Nos. 5,643,093 5,637,042特許であり、スエージ加工された乗物のドライブシャフトに関する発明である。

  Danaの従業員は、出願の1年より前にプロトタイプを作っておりこれが”on sale bar”に該当するかが争われた。争点となったのは、問題のプロトタイプが、クレーム中の限定であるスエージ加工されたドライブシャフトの端が”substantially uniform wall thickness”を有するか否かという点である。地裁は、Donaが申し出た、”substantially uniform wall thickness””swaged end that is not butted”という解釈を採用し、そしてプロトタイプが”swaged end that is not butted”を有していると見えるので、”on sale bar”に該当するとして略式判決により特許を無効とした。地裁は、”substantially uniform wall thickness”という文言についての独自のクレーム解釈を行なわなかった。地裁の判決を不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、”on sale bar”を適用するためには、まずクレーム解釈を独立して行い、次いでその解釈に基づいてクレームされた発明が問題となる行為に該当するかを検討しなければならないとした。そして、単にプロトタイプが”swaged end that is not butted”を有していると見えると結論することはクレーム解釈を行ったことにならないとして、独自のクレーム解釈をおこなっていない地裁の手続きは誤りだとした。また地裁は、従属クレームに関してはそれぞれの追加の構成要件を個々に検討しなかった。CAFCはそれに関しても地裁の判断手法も誤りだとした。その結果、無効との略式判決を破棄して地裁に差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/30/2002 更新

  ジョンソン・アンド・ジョンソン事件において、明細書中に開示されているがクレームされていない範囲に均等が及ぶかということが、CAFCの全員法廷で争われていましたが、一昨日(3月28日)に判決が出されました(Johnson & Johnson Assoc. Inc. v. R.E.Service Co., Inc., (99-1076, -1179, -1180, 03/28/2002)(en banc))。判決は、明細書に開示してあるがクレームされていない事項は放棄されたと見なされるので、均等が及ばないというものです。反対意見もありましたが、主意見は均等が及ばないと結論したので、今後実務者は以下のような注意が必要と思われます。

1.     .     出願時に明細書に開示されたものはクレームによって文言上カバーされているかをしっかりと確認する。また、明細書の作製においては、関連する出願に用いた記載の一部を単にコピーすることがよく行なわれるが、その際、明細書に開示されているがクレームに文言上カバーされないものが無いが確認する必要があります。

2.     .     許可通知を貰った際に、もう一度明細書の中身とクレームを比較して、明細書に開示されたものがクレームによって文言上カバーされているかを確認する。もし、カバーされていない事項があったら、継続出願等を行ってクレームを広げる。

3.     .     特許の発行後2年以内のものについては、もう一度明細書の中身とクレームを比較して、明細書に開示されたものがクレームによって文言上カバーされているかを確認し、もしカバーされていない事項があったら、再発行特許出願を行ってクレームを広げる。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/27/2002 更新

Tate Access Floors Inc. v. Interface Architectural Resources Inc., (01-1275, 02/07/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは、被告の製品は先行技術を実施しているものであるから特許権を侵害しないとする抗弁は有効であるかという点である。

  問題となった特許は、Tateが有するUSP No.4,625,491特許であり、その下にケーブルやパイプを這わすことのできるフォローリングパネルに関する発明である。

  Tateは、Interfaceを特許侵害で訴え、地裁は仮差止めを認めた。それを不服として控訴されたのが本事件である。

  Interfaceは、被告の製品は単に先行技術を実施しているだけであるかあるいは先行技術より自明のものであるから非侵害であるとの主張を行なった。

  CAFCは、「先行技術を実施している」ということは文言侵害に対する抗弁にはならないとして被告の主張を退けた。被告はまた、「先行技術を実施している」という抗弁は逆均等論と対をなす理論として認められるべきであると主張したが、裁判所は、CAFCが逆均等論に基づいて非侵害とした事件はなくまた逆均等論自体が殆ど適用されないものであるから、さらに新たな法理を作る理由は見出しがたいとして被告の主張を退けた。そして、地裁の仮差止めの判決を支持した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/24/2002 更新

Tamko Roofing Products Inc. v. Ideal Roofing Co., (01-1382, 03.07.2002, 1st Cir. 2002)

争点となったのは、商標権侵害において、例外的事件(exceptional case)とされ弁護士費用を請求するためには、「故意(willful)」に加えて「悪意(bad faith)」が必要であるかという点である。

  Tamkoは、”Heritage”という商標を1975年から使用しており、また”The American Heritage Series”という商標を登録していた。1997年にIdeal”Heritage Series”という商標を用いたので、Tamkoが差止め請求をしたのが本事件の始まりである。地裁は、差止め請求を認め、それを不服として控訴されたのが本事件である。

  被告は、”willful”は単なる自発的且つ意図的な(voluntary and intentional)行為だけではなく、幾分かの詐欺的意図または悪意(fraudulent or malicious)が必須であると主張した。しかし、第1巡回区控訴裁判所は、詐欺(fraud)または悪意(bad faith)は例外的事件の場合に弁護士費用を認めることの正当な理由となり得るが必須のものではないという地裁の判断を認めて弁護士費用を認めた。

コメント:特許においては例外的事件として弁護士費用が認められるためには、悪意(bad faith)を示す強い証拠が必要とされるが、Lanham Act(商標法)では異なりそれは必要ないと示されました。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/19/2002 更新

Random House Inc. v. Rosette Books, (01-7912, 03/08/02, 2nd Cir. 2002)

  争点となったのは、契約中の”in book form”e-bookが含まれるかという点である。

  Random Houseは、著作権者より、”in book form”での版権について排他的ライセンス(exclusive license)を受けていた、その後、Rosette”e-book”に付いて著作権者より版権を得て、e-bookを販売した。そこで、Random House が、Rosetteに対して仮差し止め命令を申請した。

  地裁は、Random Houseの申請を却下した。第2巡回区控訴裁は、地裁の判断は権利の乱用は無いとして地裁の判決を支持した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/16/2002 更新

Kohus v. Cosco, (01-1358, 03/13/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは勝訴した側が請求できる裁判費用である。

  Kohusが特許侵害でCososを訴え、その裁判は非侵害との略式判決で決着した。その後、Coscoが裁判費用の返還を求めた。法律では、返還請求できる費用として、(1) 裁判所の官吏等の費用、(2) 事件に必要な証言等を取るためにかかった裁判記録係の費用、(3) 印刷および証人のための出費、(4) 裁判のために必要な書類のコピーにかかった費用、(5) 法律で決められたdocketのための費用、(6) 裁判所が任命した専門家証人、通訳者等の費用、が認められている(28 USC 1920)。

  問題となった特許は、USP No. 4,688,280特許で、折りたたみ可能な持ち運びできるベビーサークルであったが、特許権者自身は実施していなかった。そこで、被告が、特許の実施例にあるモデルを製作し、その構造、機能および操作をビデオにとって裁判の証拠として用いた。被告はその費用を原告に請求し、地裁は、$12,950を被告に支払うに認めた。それを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、ビデオは物的証拠の代替としてのものであり、被告の弁護士による議論と専門家証人による説明のために作られたものであるから、「裁判のために必要な書類のコピーにかかった費用」とは認められないとして地裁の判決を破棄した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/11/2002 更新

Bayer AG v. Bioval Corp. & Elan Corp., (01-1329, -1330, 02/07/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは先の裁判に基づく争点効である。

  問題となった特許は、Bayerが有するUSP No. 5,264,446特許であり、医薬組成物およびその組成物を用いた高血圧の治療法に関する特許である。クレームの構成要件の一つとして、組成物の表面積が特定の値を取るように規定されていた。

  BayerElanは以前にも裁判で争っており、その際は、ElanANDAに基づいて30mg60mgの製剤の申請を行い、これを受けてBayerが特許侵害を提訴した。その裁判では、ANDAで出された資料に基づいて30mg製剤の医薬の原料が特許のクレームの要件である特定の数値を満たしていないとして非侵害との結論を地裁が下した。一方、60mg製剤については、地裁は、クレーム解釈の議論は行なわず、60mg製剤に関するANDAの資料が30mg製剤に関するものの関係のある部分と同じであると認定し、30mgの事件をもとに争点効により60mg製剤に関して、非侵害との略式判決を出した。これを不服として提訴されたのが本事件の一部である。

また、被告は認可後、30mgの製剤を錠剤の商品として販売した。Bayerは、この30mgの錠剤商品に対しても特許を侵害しているとして新たに訴訟を提訴した。地裁は、やはり先のANDAに関する30mgの製剤の事件をもとに、争点効により30mg錠剤商品に関して非侵害との略式判決を出した。これを不服として提訴されたのが本事件の残りの部分である

CAFCは、60mgANDAの件はその争点は30mgANDA の件と似ているが、証拠は異なるとした。また、30mgの錠剤商品に関しても、原料と製品とは異なる証拠であるとした。そして、30mgANDAの事件をもとに争点効により60mgANDAの件および30mgの錠剤商品の件を、略式判決で非侵害とするのは誤りであるとして判決を破棄し地裁に差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 03/03/2002 更新

Epcon Gas Systems, Inc. v. Bauer Compressors, Inc., (01-1043, -1071, 02/02/2002, Fed. Cir. 2002)

  争点となったのは、クレーム解釈であり、特にはクレームが、第112条第6項のミーンズ・プラス・ファンクションクレームとされるかという点である。

  問題となった特許は、Epconが有する、USP No. 5,118,455特許であり、射出成型工程のためにガスを供給する方法およびそのための装置に漢する発明である。問題となったクレームは、クレーム2(方法クレーム)とクレーム16(装置クレーム)である。地裁は、非侵害との略式判決を行なった。

 クレーム2には、ガス圧を「選択的に上昇・下降・或いは実質的に一定に保つ」という文言が含まれていた。地裁は、クレーム2をステップ・プラス・ファンクションクレームと認定した。CAFCは、クレーム2は、機能をクレーム中に列挙せずに一連のステップを列挙しているに過ぎないので、第112条第6項の、ミーンズ・プラス・ファンクション(ステップ・プラス・ファンクション)には該当しないとして、地裁は判断を誤っているとして、審理を地裁に差し戻した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 02/20/2002 更新

Rheox Inc. v. Entact, Inc., (01-1001, 01/08/2002, Fed. Cir. 2002)

  クレームの限定解釈が争われた事件である。

  問題となった特許は、Rheoxが有するUSP No. 5,162,600特許であり、鉛で汚染された土壌を改善する方法に関する発明である。具体的は、”calcium orthophosphate”を用いて”mobile lead”の量を減少させる発明である。

  被告の製品は、”triple superphosphate (TSP)”を用いていた。TSPは主に”monocalcium orthophosphate”からなっていた。そこで争点となったのは、クレーム中の”calcium orthophosphate””TSP””monocalcium orthophosphate”を含むかという点である。

  600特許では、出願時に好ましい実施例としてTSPを用いた実施例が記載されていた。また出願当初のクレームでは、独立クレームは”calcium orthophosphate”となっていたがその下位(従属)クレームにはTSP”monocalcium orthophosphate”が記載されていたし、別の独立クレームではTSPが選択肢の一つとして記載されていた。ところがその後先行技術を引用した審査官からの拒絶理由に対応して、出願人はTSP”monocalcium orthophosphate”の記載を削除していた。

  地裁は、”TSP””monocalcium orthophosphate””calcium orthophosphate”の通常の意味に含まれるが、出願人は特許を取得するために”TSP”および”monocalcium orthophosphate”を放棄していることが出願経過より明らかであるとしてクレームを限定解釈して非侵害との略式判決を出した。それを不服として控訴されたのが本事件である。

  CAFCは、好ましい実施例の態様がクレーム範囲から外れるのはまれでありそれは強い証拠により支持されていなければならないとしながらも、本件においては”TSP”および”monocalcium orthophosphate”がクレーム範囲から放棄されているのは出願経過から明らかであるとして地裁の判決を支持した。

 

 

US IP Case 最近の判決 à 02/17/2002 更新

Antonious v. Spalding & Evenflo Comp., Inc, (01-1088, 01/07/2002, Fed. Cir. 2002)

  弁護士に対する制裁が争われた事件である。

  Antoniousは、ゴルフクラブのヘッドの発明に関する特許(USP No. 5,482,279)でSpaldingを訴えたが非侵害となった。この際の提訴の仕方に関して、即ちAntoniouの弁護士であるFinnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner, LLPの弁護士が行なった提訴の仕方に対して、Spaldingが制裁を求めたのがこの事件のもとである。

  特許権者であるAntoniousは、Spaldingのメタルウッドを一つ買いそれをカットし、自身の特許を侵害していると判断した。そして、Finneganの弁護士を雇って提訴をした。Finneganの弁護士は、訴状には279特許のどのクレームが侵害されているのか、またSpaldingのどの製品が279特許を侵害しているのかを特定していなかった。その後、裁判所から裁判の進行予定が出された後、手紙にて侵害されているクレームと被告の製品を特定した。侵害していると特定された被告の製品は、ウッドの他フェアウエイウッドも含んでおり、全部で21種類になった。特許侵害に関しては非侵害との判決になった。そん後Spaldingが、Finneganの弁護士のやり方はばかげた(frivolous)提訴等を禁止している民事訴訟手続法に違反するとして、制裁を求めた。地裁は、Spaldingの主張を認め、Finneganに制裁を課した。これを不服として、控訴されたのが本事件である。

  民事訴訟手続法(Federal Rule of Civil Procedures)の11条は、提訴する際に弁護士に要求される義務を規定しており、特許侵害訴訟においては、弁護士は、クレーム解釈、解釈したクレームと被告製品の比較、適当な提訴前の調査等が要求される。本件においては、Finneganの弁護士は、Antoniousも持ってきたカットされた一つのウッドしかみておらず、それ以外の製品を訴訟対象に入れたのは、Spaldingの広告中の「Top-Flite Intimidatorフェアウエイウッドはドライバーと同じチタンインサート技術を用いている」という一行の記載によってであった。

  CAFCは、まずAntoniousによる提訴がばかげた提訴であるか否かを検討した。これに関しては、Finneganによるクレーム解釈もまた特定した